第19回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞(主催:日刊工業新聞社、後援:経済産業省/環境省、協力:日本冷媒・環境保全機構)において、弊社は「優秀賞」を受賞いたしました。
冷媒フロンのリサイクルネットワーク構築と高純度再生品の供給
阿部化学株式会社(静岡県焼津市)
阿部化学は空調・冷凍機器の廃棄で不要になった冷媒フロンの再生、破壊処理を手がける。フロンの回収から再生、充填までの一貫したリサイクルネットワークを構築し、業界をリードしながら改正法の啓蒙活動をしている。
現在、冷媒回収推進・技術センター(RRC)認定のフロン再生事業所は全国に5カ所ある。このうち同社は2001年に2番目に認定、15年以上の実績がある。06年から直近10年間の再生冷媒の製造合計は約3300㌧で、回収した冷媒を破壊処理せず、再生処理したことによる温室効果ガス削減効果は、二酸化炭素(CO₂)換算で約1万3000㌧と試算。
冷媒回収-原料の受入分析-蒸留再生処理-製品品質分析-小分け充填-保管-販売-容器引取り。こうしたリサイクルネットワークでは、原料の安定確保がカギを握る。同社は、家電リサイクル工場でエアコンや冷蔵庫から回収された冷媒を原料とし、再生処理後、空調・冷凍機器の補充用冷媒として供給するルートを構築している。また地元の静岡県を中心に冷凍倉庫や遠洋漁船で再生冷媒の利用を提案・啓蒙し、採用されて10年以上となる。最近は、自社独自輸入したNRC容器(再充填禁止容器)を高圧ガス保安協会の容器検査合格後、再生冷媒を小分け充填して、関西圏や関東圏への出荷を増やしている。
一方、自社で1㌧を超える大規模な冷媒回収に対応できるのも強み。東日本大震災の被災漁船から2㌧のR22冷媒(HCFC)を回収、また愛知県内の化学プラントから低圧冷媒68㌧を回収した。これだけの規模を短期間で回収できる業者は全国でも2~3社と極めて少ない。
冷媒再生設備は、合計4基(低圧2基/高圧2基)、純度向上と水分除去に優れる還流方式の蒸留精製法を採用。HFCは混合冷媒が多い。その代表的銘柄であるR410Aは、R32とR125を各50%で構成するが、回収後は沸点差異が圧力差となり組成バランスが崩れる。そこで、還流比調節しながら分留し、新品冷媒を追加することなく、最終的に50:50の組成になるよう再調整する技術の実証にも取り組んだ。これによって、新たな温室効果ガスの使用を抑制できる。
15年4月のフロン排出抑制法施行で、回収・破壊から再利用に大きく軸足が移る中、第一種フロン類再生業者の許可を取得し(許可番号27S0003)「補充用冷媒のメーカー」として、より存在感を増し、役立つ企業を目指す。
高純度再生品を製造する高圧冷媒蒸留設備